n-Archives.net

Windows10の2つのWake on LAN方式と設定方法詳細

目次


 

Windows10のWake on LANの仕組みを整理する

Wake on LAN の仕組み、設定方法については、以前から理解が難しく、また、情報が整理されておらず、しばしば、混乱を引き起こしていました。例えば、WOLの設定には、「高速スタートアップ」を無効化しなければならないのか、しなくてもいいのか、十分理解できる情報がなかったのが現状だと思います。

そのような中、少し前になりますが、@ITさんの以下の記事を読ませていただきました。

 

 

この記事、非常によく整理されており、Wake on LANの現状が分かりやすく解説されていると思いました。私もよくわかっていませんでしたが、実は、Wake on LANを機能させる方法には「ハードウェアWOL」「ソフトウェアWOL」という2つの方式が存在するということで、それを理解することで高速スタートアップの件もようやく理解できたように思います。そのような内容について、せっかくですので、私自身の頭の整理のためもあり、まとめてみたいと思いまして、本記事を執筆させていただきます。

この記事では、Windows10の電源管理についてまとめており、過去のWindowsバージョンについては考慮していませんのでご注意ください。

 

Windowsの電源管理

WOLの方式の話に入る前に、まず、Windowsの電源管理について必要なポイントについておさらいしたいと思います。

 

システムの電源状態 (System Power State)

Microsoftのページから、Windows システムの電源状態は、以下のようになります。(説明欄は私の理解で補足した内容になります。)

Windowsのシステム電源状態
Power State ACPI state 説明
Working S0 起動状態
Sleep (Modern Standby) S0 low-power idle Modern Standbyに対応したPCでは、Windows10のスリープはこの電源状態になる。Sleep状態だがバックグラウンドで必要な最低限のNW通信処理などが行われる。
Sleep S1, S2, S3 システムは停止状態になるが、メモリ上のデータはそのままメモリ上に維持され、リフレッシュされ続ける。(消費電力は S1>S2>S3)
Hibernate S4 メモリ上の実行イメージをディスクに保存し、システムは停止状態になる。消費電力はSleepより低減。
Soft Off S5 Windowsが完全に終了した状態。
Mechanical Off G3 物理的な電力断。

※ PCをWakeupさせるため、キーボードやLANデバイスなどのデバイスには最小限の通電が行われます。

 

参考ページ:System Power States  (Microsoftのページ)

 

Windows10の停止方法による電源状態

Windows10において、システム停止方法によってどのような電源状態に遷移するかをまとめたものが以下の表になります。

Windows10 の停止方法と電源状態
OS 停止方法 遷移する
電源状態
状態説明
Windows 10 スリープ
(Modern Standby PC)
S0 low-power idle Modern Standbyに対応したPCでは、Windows10でのスリープはこの電源状態になる。Sleep状態だがバックグラウンドで必要な最低限のNW通信処理などが行われる。
スリープ
(非Modern Standby PC)
S3 Modern Standbyに対応していない従来型のPCのスリープはこの電源状態になる。
システムは停止状態になるが、メモリ上のデータはそのままメモリ上に維持され、リフレッシュされ続ける。
LANデバイスなどには通電させるため、WOLは可能。
休止状態 S4(Hibernate) Modern Standbyに対応していない従来型のPCのスリープはこの電源状態になる。
メモリ上の実行イメージをディスク(hibernation file)に保存し、起動時に高速に復帰できるようにする。 (※)
LANデバイスなどには通電させるため、WOLは可能。
シャットダウン
(高速スタートアップ有効時)
S4(Hybrid shutdown) Windowsのメモリ上の実行イメージをディスクに保存し、起動時に高速に復帰できるようにする。
Hybrid shutdown(高速スタートアップ)は、Hibernateの一種ではあるが、Windows10のデフォルトのシャットダウンであるため、電力を極力抑えるため、WOLに対応していない。
シャットダウン
(高速スタートアップ無効時)
S5 Windowsが完全に終了した状態。(Windowsの管理外。)
フルシャットダウン、または、クラシックシャットダウンと呼ばれる。

(※)以前の記事の記載に誤りがありましたので修正しています。

注意いただきたいのは、「S4(Hibernate)」と「S4(Hybrid shutdown)」は同じS4ですが、振る舞いが異なる点です。

S4(Hibernate)状態はWOLは可能なのですが、S4(Hybrid shutdown)はWindows10の標準のシャットダウンとなっており、ノートPCなどで電力消費を極力抑えるため、WOLには対応していない仕様になっています。

 

また、Modern Standbyに対応したPCは2020年頃から増え始めてはいるようですが、まだ非対応のPCも多いと思います。PCが ModernStandbyに対応しているかどうかを確認するには、以下のコマンドを実行してみてください。

powercfg /a

「スタンバイ(S0 低電力アイドル)」がサポートされていれば、Modern Standby に対応しています。

 

2つのWOLの仕組み

WOLを実現する方式には、「ハードウェア WOL」 と 「Windows WOL」 の2種類が存在します。それぞれの詳細と、比較について以下にまとめていきたいと思います。なお、この2つの方式のネーミングは、前出の@IT記事を参考に、私がここで勝手に決めた呼び方ですので、ご容赦ください。

 

2つのWOL方式

2つの方式の概要を以下の表に示します。ポイントは、Windowsがサポートしているのは、Windows WOLだけだという点です。Microsoftのページを見ても情報が掲載されているのは、Windows WOLに関するものだけです。一方、ハードウェアWOLについては、NICやマザーボードなど最近はほとんどの製品がこの機能を備えるようになってきていますが、製品ベンダがそれぞれ開発してきた経緯もあり、用語の標準化や情報の集約の点でまだ十分でないような気がします。

2つのWOL方式
項目 ハードウェア
WOL
Windows
WOL
WOL実装 Windows とは関係なく、ハードウェアの仕組みとして提供されているWOLの仕組み。Microsoft はサポートしていない。 Windowsが実装しているWOLの仕組み。
WOL可能な電源状態 S5 S3
S4(Hibernate)

2つのWOL方式が具体的にどのような方式なのかについては、@IT記事をご参照ください。

【リモートワーク自由自在】Windows 10 Wake On LAN(WoL)入門  (@IT記事)

 

必要となるPCの設定

Wake on LANの設定については、「Wake on LANによるWindows10遠隔起動の設定方法」に情報をまとめていますが、主に、「BIOS/UEFIの設定」と「Windwosネットワークアダプタの設定」の2つの設定について説明しています。上記の2つのWOL方式について、必要な設定は以下の表のとおりとなります。

 

2つのWOL方式に必要なPC設定
PC設定項目 ハードウェア
WOL
Windows
WOL
BIOS/UEFIの設定 必要 不要
Windwosネットワークアダプタの設定 必要 必要

「BIOS/UEFIの設定」と「Windwosネットワークアダプタの設定」の両方を設定しておけば、2つのWOL方式どちらも対応可能になります。

各設定項目の具体的な内容については、それぞれ以下のページをご覧ください。

 

 

WOLが可能な条件

2つのWOL方式について、WOLが可能な条件を以下にまとめます。

2つのWOL方式とWOL可能な条件
停止方法 状態 ハードウェア
WOL
Windows
WOL
スリープ
(Modern Standby PC)
S0 low-power idle × ×
スリープ
(非Modern Standby PC)
S3 × WOL可能
休止状態 S4(Hibernate) × WOL可能
シャットダウン
(高速スタートアップ有効時)
S4(Hybrid shutdown) × ×
シャットダウン
(高速スタートアップ無効時)
S5 WOL可能 ×

上記の表から読み取れるように、ハードウェアWOLを実施するためには「高速スタートアップ」は無効にする必要があります。一方、Windows WOL に関しては、「高速スタートアップ」はどちらに設定されていても影響はありません。

「高速スタートアップ」を無効にしなくてもWOLが可能だったというケースがあるようですが、おそらく、

  • 「スリープ(非Modern Standby PC)」、または、「休止状態」にした時に、Windows WOLの機能が働いたケース

ということなのだと思われます。

高速スタートアップを設定する方法については、以下の記事をご覧ください。

 

マジックパケットの送受信の仕組みはどちらのWOLも同じ

2つのWOL方式について説明をしてきましたが、マジックパケットの処理に関しては、どちらの方式も同じです。ですので、「起動する側のPC」にインストールする WOLツールの設定は2つの方式を考慮する必要はありません。

 

結局どのような設定にしておくべきか

Windowsの電源管理、2つのWOL方式についていろいろと書きましたが、結局どのような設定をしておけばよいのでしょうか。

 

個人的に考えてみた結果、どのようなケースでもWOLができるようにしておくため、どちらのWOL方式も有効にしておくのが望ましいと思われます。Windows WOLだけを有効にした場合、何かの際にフルシャットダウン(クラシックシャットダウン)を行ってしまった場合は、WOL起動できなくなってしまいます。

つまり、どちらのWOL方式も有効にしておくため、以下の手順全てを実施しておくということになります。

 その場合、「高速スタートアップ」も無効にしておく必要があります。

これによりどちらのWOL方式も有効になります。

 

ただし、以下のような方については、Windows WOL方式だけ使えればよいと思われ、「Windwosネットワークアダプタの設定」をしておくだけで良いかもしれません。

  • 非Modern Standby PCであり、シャットダウンはせず、常にスリープか休止状態にする方
  • PC設定の経験がなく、BIOS/UEFIの設定に自信がない方

 

いかがでしょうか。Wake on LAN の仕組みの理解の参考になりましたでしょうか。ちょっと長くなってしまったので、@IT記事より、逆に分かりにくくなってしまったかもしれません。ご参考になれば幸いです。

 

用語メモ

日英用語対応表
日本語 英語 備考
休止状態 Hybernate  
高速スタートアップ Fast Startup  
ハイブリッドシャットダウン Hybrid Shutdown 高速スタートアップと同義で使われる

 

参考ページ

 

 

 

【関連記事・関連コンテンツ】

 

 

コメントをお送りください
お名前:
コメント:
コメントの公開: